安田記念2022 勝ち馬プロファイリング

グランアレグリア・インディチャンプ・ダノンキングリーが引退し、一気に混戦模様となったマイル路線。実際、マイル重賞では条件クラスを卒業したばかりの馬が重賞でも連勝を伸ばすなどして新星誕生のきざしも。

安田記念 出走馬

確定した出馬表は上のとおり。これまでマイルG1に出走したことがある馬は内枠から順に以下のとおり

カフェファラオフェブラリーS 1着(※ダート1600)
ヴァンドギャルド2020安田記念 10着 2020マイルCS 6着
ロータスランド2020マイルCS 12着
ダノンザキッド2021マイルCS 3着
ホウオウアマゾン2021NHKマイルC 9着 2021マイルCS 5着
カラテ2021安田記念 13着
ファインルージュ2021桜花賞 3着 2022ヴィクトリアマイル 2着
シュネルマイスター2021NHKマイルC 1着 2021安田記念 2着 2021マイルCS 2着
カテドラル2019NHKマイルC 3着 2019 マイルCS 6着
2021安田記念 12着 2021マイルCS 9着
ソングライン2021桜花賞 15着 2021NHKマイルC 2着 2022ヴィクトリアマイル 5着
セリフォス2021朝日杯FS 2着 2022NHKマイルC 4着
レシステンシア 2019阪神JF 1着 2020桜花賞2着 2020NHKマイルC 2着
2021ヴィクトリアマイル 6着 2022ヴィクトリアマイル 3着
サリオス2019朝日杯FS 1着 2020マイルCS 5着 2021安田記念 8着
2021マイルCS 6着 2021香港マイル 3着

上位人気が想定される馬のうち、イルーシヴパンサー・ソウルラッシュの2頭はマイルG1(G1レース自体)初出走。

安田記念 過去10年の好走馬分布図

上の分布図は安田記念の直近10年(不良馬場の2014年除く)の1着馬と直近5年(2017年~2021年)の2~5着馬を、縦軸1000m通過タイム(各馬)・横軸上がり3Fタイム(各馬)で整理したもの。

過逃げて勝ったのは、1000m通過タイムが過去20年で最も遅かった2016年のロゴタイプのみ。最も配当妙味が高いのは先頭から残り3F地点(スタートから1000m地点)で先頭から0.8~0.9離れた組。実際にも1000m通過58秒前後のゾーンから勝ち馬が5頭でている(1000m通過平均は57.2秒)。

勝ち馬の上がりタイムは、過去平均で33.5秒(良馬場時)。高速決着必至の東京競馬場なだけに、前目で捌くタイプであっても34.0秒くらいではまとめられる持久力が欲しい。また、猛烈に早いあがりを使えたとしても前も止まりづらいコースなだけに位置取りが後ろ過ぎれば届かないケースがあることに注意しておきたい(2019年アーモンドアイ・サングレーサー・2018年サトノアレスの例)。

以上を前提にすると、想定勝ち馬はピンクのゾーン、2・3着馬は橙色のゾーンという想定になる。

安田記念2022 出走有力馬の過去レースパフォーマンス

こちらは、さきほどと同じ分布図を今年の出走馬に適用したもの。レースの行われたコースや時期の違いがあることは含み置いて数値を読まなければならないことには注意しておきたいが、今年の出走馬ですでに安田記念での好走レンジに届く競馬をしていたのは、シュネルマイスターとカテドラル・ソングライン・ファインルージュの4頭のみ。

そのほかの馬は、次の点を克服できるかどうかがポイント。

  • カフェファラオ:芝での高速決着への適用
  • ロータスランド:1000m57秒台でも早い上がりでまとめられる持久力
  • ダノンザキッド:道中ペースへの適用(さらに早い時計についていけるか)
  • カラテ:高速決着への適用
  • イルーシヴパンサー:いままでより早くなる前半ペースへの適用
  • セリフォス:NHKマイルよりも厳しい相手でのパフォーマンスアップ(前走からの上積み)
  • レシステンシア:33秒台での上がり

58kgに耐えられるか?

安田記念はマイルG1で唯一基準斤量が58kg(牝馬-2kg、3歳-4kg)となるレースで、ほとんどの馬が前走から斤量増でのパフォーマンスアップを求められることになる。

  • 2002 アドマイヤコジーン 経験なし ただし、57kgでGⅠ2着(高松宮記念)
  • 2003 アグネスデジタル 58kgでG1勝ち(天皇賞(秋))
  • 2004 ツルマルボーイ 58kgで複数のGⅠ2着
  • 2005 アサクサデンエン 条件戦で58kg経験あり、57kgでGⅡ勝ち(京王杯SC)
  • 2006 ブリッシュラック(香港) 前年も安田記念出走。香港でも58kg経験済み 
  • 2007 ダイワメジャー 前2年安田記念出走 58kgでG1勝ち(天皇賞(秋))
  • 2008 ウォッカ 56kg経験済み(京都記念4着)
  • 2009 ウォッカ
  • 2010 ショウワモダン 前走メイSで59kg経験済み(1着)
  • 2011 リアルインパクト ※当時3歳で54kgでの出走
  • 2012 ストロングリターン 前年も安田記念出走・条件戦で58kg経験あり
  • 2013 ロードカナロア 57kgでGⅠ勝ち(スプリンターズS・香港スプリント・高松宮記念)58kgでGⅢ勝ち(阪急杯)
  • 2014 ジャスタウェイ 58kgでG1勝ち(天皇賞(秋))・GⅡ勝ち(中山記念)
  • 2015 モーリス 経験なし、条件戦でも57kgまで
  • 2016 ロゴタイプ 58kgで複数のGⅡ・GⅢ入着
  • 2017 サトノアラジン 前年も安田記念出走
  • 2018 モズアスコット 経験なし。前走で背負った56.5kgが当時の最高負担重量
  • 2019 インディチャンプ 経験なし 56kg(東京新聞杯勝ち)まで
  • 2020 グランアレグリア 経験なし ただし、55kgでGⅠ勝ち(桜花賞)・GⅠ2着(高松宮記念)
  • 2021 ダノンキングリー 前年も安田記念出走

過去20年の安田記念勝ち馬の58kg経験の有無は上記のとおりで、58kgの経験がなかった勝ち馬は1/4の5頭。ただ、そのうちアドマイヤコジーンとグランアレグリアはそれに準ずる斤量(-1kg)でGⅠ好走の実績があり、本当に斤量に対して未知数だったのは、モーリス・モズアスコット・インディチャンプの3頭のみということになる。

今年の出走馬で58kgおよびそれに準ずる斤量実績のある馬は下記のとおり

  • ①カフェファラオ フェブラリーS(57kg1着)、函館記念(58.5kg9着)
  • ②ヴァンドギャルド 2020安田記念10着
  • ③ロータスランド 京都牝馬S、高松宮記念(55kg2着)
  • ⑥カラテ 2020安田記念13着、2022ニューイヤーS勝ち
  • ⑦ファインルージュ 2022ヴィクトリアマイル(55kg2着)
  • ⑨シュネルマイスター 2022NHKマイルC(57kg1着)
  • ⑪カテドラル 2021安田記念12着
  • ⑫ダイアトニック 函館SS勝ち
  • ⑬ソングライン 2021NHKマイル(55kg2着)・2022ヴィクトリアマイル(55kg2着)
  • ⑯レシステンシア 2021高松宮記念(55kg2着)・2021スプリンターズS(55kg2着)
  • ⑰サリオス 2021安田記念8着
  • ⑱ナランフレグ 2022高松宮記念(57kg1着)

なお、ダノンザキッド・イルーシヴパンサーは57kgでの入着経験がなく、ソウルラッシュは56kgまでしか背負ったことがない。

近年よりもレベルの落ちる組み合わせ

冒頭でも触れたように、グランアレグリア・インディチャンプ・ダノンキングリーがまとめて引退したことで今年のマイル路線は「主役不在」の混戦模様。それゆえに近年と比べてレースレベルそれ自体が下がる可能性も高い。また道中のペースも昨年並みのスローになる可能性も低くない。したがって、勝ち馬の想定レンジも例年よりはやや広め(上記分布図赤点線枠内)で把握しておく必要がありそう。

安田記念2022 勝ち馬候補5頭

ここまで述べてきたような視点から安田記念の勝利に近いと考えられるのは次の5頭(馬番順)。

カフェファラオ(1枠1番福永騎手)

フェブラリーSを勝ち、ダート・芝双方でのマイル王者を目指すレース。東京ダート1600mは、スピードの持続力が強く問われる点で日本のダートコースのなかでは非常に特異。実際にもフェブラリーSで3着にはいったソダシがヴィクトリアマイルでも優勝し、過去には順序が逆になるがモズアスコットが芝・ダートのマイル2冠をなし遂げている。同馬は、ワンターンコースでのスピードの持続力勝負が強いというタイプで、同じダート1600mでもかしわ記念のような1周コースでは持ち味が活きないし、洋芝の1周競馬となる函館記念は特異コースとは真逆の設定で完全に度外視してよいといえる。内枠からよいポジションをとれそうなのも魅力で、前半ペースにさえ戸惑わずについていければ1発の可能性は十分。

ファインルージュ(4枠7番武豊騎手)

ヴィクトリアマイルは最後の直前で大きく躓く致命的な不利。これがなければ勝ち負けはともかくもっときわどい競馬に持ち込めていたことは事実。ここまでも(結果として)距離が長かったオークスを除けば4着以下なしの安定した成績を残していて、4歳になってたくましさも増した印象。今年のメンバーであれば前走だけ走れれば十分勝ち負けになりそうなだけに当然有力。

イルーシヴパンサー(4枠8番田辺騎手)

皐月賞10着のあとはマイル路線に切り替えての4連勝でそのすべてが東京コース。前走の東京新聞杯勝ちも2月開催の東京で上がり33.1秒は非常に優秀で、新しいマイル王者の資格は十分。ただ、東京マイルで3勝した際の1000m通過ラップは、58.2(1勝クラス)・61.6(2勝クラス)・59.2(東京新聞杯)というのがやや物足りなく、未知の58kgで前半ペースが早くなることへの対応が課題となる。

シュネルマイスター(5枠9番ルメール騎手)

昨年のマイル路線では、NHKマイル勝ち・安田記念3着・マイルCS2着。また、毎日王冠でも安田記念勝ち馬ダノンキングリーを並ぶところなく差し切った強い勝ち方。昨年のレースパフォーマンスも勝ち馬相当レベルで当然勝ち馬に最も近い存在。懸念されるのはドバイ帰りの後遺症や仕上がり不足。中間は「まだ少し太い」という声がきこえるだけに、当日の仕上がり具合はしっかり見定めたい。ただ、昨年と比べて小粒感の否めない今年の組み合わせでは8分の仕上げで圧勝してしまってもおかしくはない。

ソングライン(7枠13番池添騎手)

昨年はNHKマイルでシュネルマイスターの2着となり、秋は安田記念と同じ舞台となる富士Sを牡馬相手に快勝。年末の阪神Cは案外だったものの春のサウジ遠征では国際GⅢ勝ち。前走も道中に不利がありながら勝ち馬から0.3秒差の5着で、ファインルージュ同様不利がなければ・・・といったところで、ファインルージュを候補に挙げる以上はこちらも同程度の扱いで当然有力馬の1頭。

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