日本ダービー2022 勝ち馬プロファイリング①前走皐月賞組の検討

2019年世代7522頭の頂点を決めるレース。出走馬18頭が決まったところで、今年のダービー馬に最も近いと思われる馬をプロファイリング。今回は日本ダービーで馬券に絡む数の最も多い前走皐月賞組の検討から。

皐月賞の結果

1000通過60.5秒-後半1000m59.2で絶対的な時計としてはややスロー。ただ、当日の馬場差(基準タイム)を加味した補正タイムは標準の100を大きく超え優秀。また、オニャンコポンは道中で後方に下げるロスなど大きな不利もありもったいない競馬に。完全に上がりの競馬に徹したドゥデュースと最内で窮屈な競馬になったダノンベルーガの評価が難しいところ。

二冠馬は誕生するか?皐月賞馬のダービーでの傾向

日本ダービー過去20年の結果では皐月賞からの連勝で二冠を達成した馬は6頭で、数字上では二冠馬誕生の可能性は30%ということに(連対率45%・複勝率60%)。他方で、皐月賞勝ちにも関わらず日本ダービーで馬券にもならなかった馬は下記の8頭。

  • 2002年ノーリーズン
  • 2004年ダイワメジャー
  • 2007年ヴィクトリー
  • 2009年アンライバルド
  • 2012年ゴールドシップ
  • 2013年ロゴタイプ
  • 2017年アルアイン
  • 2019年サートゥルナーリア

結果論ではあるが、これらの馬の大半はスピードに勝ちすぎたタイプで「ダービーは距離が長かった」といえそう。ゴールドシップについては「ゴールドシップだから(走らせないとわからない)」と結論づけておくのが正しい気がしないではない。

上のグラフは2001年以降(過去21年)の皐月賞の1000m通過と後半2Fのレースラップの分布図(✕は皐月賞馬がダービーで着外に終わった年)。皐月賞勝ち→ダービー着外のパターンになった馬の多くに共通するのは、皐月賞の前半ラップが早かったという点。皐月賞を良馬場&前半1000m59秒を切ったラップ勝った皐月賞馬で馬券になったのは2015年のドゥラメンテと2016年のディーマジェスティの3着の2例のみ(緑のマークは稍重馬場で行われた年・青色はダービーに出走しなかった2008年キャプテントゥーレ)。
なお、ディーマジェスティが3着にきた2016年のダービーは1000m62.3秒のスローペースで皐月賞の1-3着馬が順位を入れ替えての1~3着独占で皐月賞もダービーもスピード勝負決着だった年といえる。2015年のドゥラメンテはその後の戦績からしても「抜けて強かった」といえ、全体的な傾向としては前半ペースの早い皐月賞の勝ち馬(好走馬)は「マイル~2000mの適性の高さ」で皐月賞を制したタイプで距離延長には疑問が残る。
なお、今年の皐月賞を制したジオグリフは父が現役時代に短距離で実績を残していたドレフォンということで距離延長を不安視する声もきこえないわけではないが、皐月賞それ自体は「1000m60.2/上がり2F22.9」で、好位の外目を追走した上でイクイノックスをねじ伏せた最後の脚からしても「スピードだけで押し切った」という勝ち方ではない。強い競馬だった札幌2歳と案外だった朝日FSの競馬を比較してみても平均的な速い足を長く使わせた方がよいタイプで、先々はともかくとして世代限定戦の日本ダービーであれば2400mでのパフォーマンス発揮には問題がないと考える。

皐月賞敗退組の買いデータと消しデータ

皐月賞で敗退した馬がダービーで逆転勝利を収めたのは過去20年で7例。まず、皐月賞10着以下に敗れた馬の巻き返しは3例すべてが「ダービーが不良馬場になった年」に集中している。今年は金曜に雨が予想されているが不良馬場になることはほぼあり得ないので、皐月賞10着以下の馬の巻き返しは難しいと判断しておきたい。今年の日本ダービーにおける前走皐月賞組でこれに該当するのは下記の3頭

  • ビーアストニッシド
  • マテンロウレオ
  • キラーアビリティ

次に、6~9着、0.6秒~0.9秒負けの馬については、2018年のワグネリアンが皐月賞7着から巻き返して勝利。こちらは「皐月賞5着以内」もしくは皐月賞でPCI52を超える末脚を出していたことが巻き返しの条件となる。
今年の前走皐月賞組で、6~9着&0.6秒~0.9秒負けに該当するのは次の2頭

  • ジャスティンロック 皐月賞PCI59.8
  • ジャスティンパレス 皐月賞PCI58.0

いずれの馬もPCI52超の末脚を使えていて巻き返しの条件はクリア。後にも触れるがPCIは高すぎてもいけない傾向があるので直線だけの末脚勝負になったジャスティンロックよりは、勝ちにいく競馬をしたジャスティンパレスの方を上位にとりたい。

皐月賞惜敗からの逆転は?

皐月賞で0.5秒差以内の負けからダービー馬となったのは次の5頭

  • 2010年 エイシンフラッシュ(皐月賞3着PCI54.1)
  • 2012年 ディープブリランテ(皐月賞3着PCI45.6※稍重)
  • 2014年 ワンアンドオンリー(皐月賞4着PCI58.2)
  • 2016年 マカヒキ(皐月賞2着PCI57.4)
  • 2017年 レイデオロ(皐月賞5着PCI56.9)

今年の皐月賞組では、下記の4頭が該当

  • ドゥデュース(皐月賞3着PCI62.1)
  • ダノンベルーガ(皐月賞4着56.3)
  • アスクビクターモア(皐月賞5着51.6)
  • オニャンコポン(皐月賞6着58.6)

このうち着順・PCI共に最上位で朝日FS勝ちのドゥデュースが抜けた存在といえそうだが、PCIが高すぎるのが逆に気がかり。元々2000mでも距離不安を指摘されていた馬で、皐月賞の乗り方は明らかに距離を意識してのもの。ダービーでも同様な乗り方になる可能性が高そうだが、差し届かず・・・という可能性も高そう。ちなみに、皐月賞でPCI60以上の末脚を繰り出した馬のダービーは、皐月賞を勝ったネオユニヴァース・オルフェーヴル以外はすべて着外。ものすごく強いか、やはりスピードが勝ちすぎて距離に不安があるかどちらかという結果に。ただ、こういう舞台を3着狙いの競馬でしっかり3着をとってくる鞍上が乗っていることや、「超スロー」なった場合には逆に終いの脚だけで届いてしまう可能性があることから完全に無視してしまうのは危険。

アスクビクターモアは前目にいってしぶとく粘り混むタイプで切れないタイプのディープインパクト産駒。内目の2枠は好枠といえ、今回も前々からの粘り込みを狙う競馬が濃厚。当日のトラックバイアス次第では逆転があっても。

ダノンベルーガは、共同通信杯勝ちで期待された皐月賞が4着。最内枠から窮屈な競馬になってしまった点は否めないものの最後の直線で見せ場らしい見せ場がなかったのが気がかり。また、共同通信杯の時計内容も昨年のエフフォーリアと比べると劣る点・キャリアが3戦しかない点は減点材料といえる。それに皐月賞4着の馬が2番人気では配当的な妙味も欠けるところで押さえまでくらいの評価がよさそう。

このグループで最も妙味が高いのはオニャンコポン。鋭い決め脚をみせた京成杯の再現とはならなかったものの、途中でポジションを下げなければならない不利があったことを考えると大健闘の6着。不利がなければ・・・もっときわどかった可能性は高い。あとは400m延長をこなせればというところ。

皐月賞組のまとめ

以上の考察を踏まえた結論としては。皐月賞組からは皐月賞1・2着馬が上位で、逆転候補は、オニャンコポン、ジャスティンパレスで、押さえにドゥデュース、ダノンベルーガ、アスクビクターモア、ジャスティンロックという結論。

皐月賞馬ジオグリフは、朝日FSが案外で、父が現役時代は短距離で活躍したドレフォン、そして喉なりというファクターが嫌われてか皐月賞馬なので4番人気想定。ただ、皐月賞の内容は十分及第点で、トップスピードを長く持続できるタイプなだけに、3歳春シーズンであれば2400mは十分こなせると考える。「皐月賞を好走しても評価されなかった馬は買い」という過去傾向からもここはむしろ買いの手。

イクイノックスは東スポ杯2歳Sからの異例のぶっつけローテーションで皐月賞を2着。当然叩いての良化も期待でき、東京コースでは東スポ杯2歳Sで非常に強い内容。現在のように日本ダービーがCコース替わりで実施されるようになってから勝ち馬のいない18番という馬番を克服できるかがカギ。