安田記念 過去20年の傾向と分析

レース名の由来は、JRAの初代理事長を務めた安田伊左衛門の姓。1951年に創設された当初は「安田賞」という名称だったが、1958年に安田伊左衛門が死去したために同年から「安田記念」と改称。グレード制導入に際して、ハンデキャップ重賞からGⅠに格付けされ、施行時期も春へ変更され現在の条件に。春のマイル路線の頂点となるレースで、マイル戦を主戦場とする馬はもちろん高松宮記念や大阪杯からも馬が集まりかなりの好メンバーになることが多い。
優勝馬には、ブリーダズカップ・マイル(米GⅠ)への優先出走権(および登録料・輸送費用の一部補助)およびジャック・ル・マロワ賞(仏GⅠ)への優先出走権が与えられるほか、1~3着馬にはムーラン・ド・ロンシャン賞(仏GⅠ)への優先出走権が与えられる。

安田記念 過去20年のラップタイム

馬場2004006008001000120014001600勝ちタイムRPCI
200212.310.811.311.511.711.711.612.401:33.341.3
200312.110.911.511.511.712.111.511.701:33.047.7
200411.910.411.411.911.911.311.612.201:32.643.8
200512.210.711.011.711.811.411.312.201:32.344.4
200612.411.011.411.611.711.511.411.601:32.648.4
200712.310.711.111.811.611.311.512.001:32.345.2
200812.111.111.411.611.711.411.412.001:32.746.3
200912.010.610.811.912.112.111.612.401:33.539.0
201012.010.710.911.311.411.311.712.401:31.739.0
201112.310.710.911.511.611.211.612.201:32.042.8
201212.210.710.911.111.411.311.811.901:31.340.8
201312.010.711.211.411.711.511.311.701:31.545.2
201412.311.111.712.012.011.812.113.801:36.836.7
201512.410.811.111.611.411.211.312.201:32.045.1
201612.311.011.712.012.111.310.911.701:33.054.3
201712.210.611.111.611.611.011.312.101:31.546.0
201812.210.811.211.311.311.411.411.701:31.344.6
201912.210.911.411.311.211.111.211.601:30.948.1
202012.110.911.211.511.611.411.011.901:31.647.0
202112.311.011.611.511.411.211.011.701:31.750.5

良馬場時の平均は1000m57.4/上がり4F46.4/上がり3F34.8/勝ち馬上がり3F34.1。
連続開催の後半にさしかかる馬場ではあるがGⅠの中でもハイレベルなメンバーが集まりやすいレースなだけに流れは厳しい。スピードの持続力がかなり高いレベルで求められるレースで、このレースの勝ち馬にフロックはほとんどないといえる。実際、人気薄で勝利した馬もその後さらにタイトルを積み重ねているケースがほとんど(古くはヤマニンゼファーがその典型)。

NHKマイル・ヴィクトリアマイルとの比較

横軸は勝ち馬の上がり3F・縦軸は1000m通過ラップの分布図。NHKマイル・ヴィクトリアマイルと比べて縦の分散が小さい。ヴィクトリアマイルは「上がりだけ」で通用することもあるレースといえるが、安田記念では道中のペースへの対応力もより高いレベルで求められる。

安田記念 過去20年 1~3着馬の脚質分布

NHKマイル・ヴィクトリアマイルと同様に差し馬が優勢。上がり3F1位の馬の複勝率は約60%で、これはNHKマイル・ヴィクトリアマイルと同水準。直線にむいた時点で1.3秒以上離されていると馬券内にもってくることは難しくなる
逃げ切り勝ちは過去20年では2016年ロゴタイプの1例のみ。

安田記念 枠番・馬番別の傾向

枠番 着別度数 勝率 連対率 複勝率
1枠 1- 3- 3-30/37 2.7% 10.8% 18.9%
2枠 4- 2- 3-28/37 10.8% 16.2% 24.3%
3枠 3- 2- 1-33/39 7.7% 12.8% 15.4%
4枠 1- 2- 3-33/39 2.6% 7.7% 15.4%
5枠 4- 2- 0-34/40 10.0% 15.0% 15.0%
6枠 0- 3- 3-34/40 0.0% 7.5% 15.0%
7枠 5- 2- 2-44/53 9.4% 13.2% 17.0%
8枠 2- 4- 5-44/55 3.6% 10.9% 20.0%

馬番着別度数勝率連対率複勝率
1番  0-  1-  1- 18/ 200.00%5.00%10.00%
2番  1-  2-  2- 15/ 205.00%15.00%25.00%
3番  2-  1-  2- 15/ 2010.00%15.00%25.00%
4番  2-  1-  1- 16/ 2010.00%15.00%20.00%
5番  2-  3-  0- 15/ 2010.00%25.00%25.00%
6番  2-  1-  2- 15/ 2010.00%15.00%25.00%
7番  1-  0-  0- 19/ 205.00%5.00%5.00%
8番  0-  1-  2- 17/ 200.00%5.00%15.00%
9番  0-  2-  0- 18/ 200.00%10.00%10.00%
10番  3-  0-  1- 16/ 2015.00%15.00%20.00%
11番  2-  1-  1- 16/ 2010.00%15.00%20.00%
12番  0-  1-  2- 17/ 200.00%5.00%15.00%
13番  0-  1-  1- 17/ 190.00%5.30%10.50%
14番  3-  0-  1- 15/ 1915.80%15.80%21.10%
15番  0-  1-  0- 16/ 170.00%5.90%5.90%
16番  0-  3-  3- 11/ 170.00%17.60%35.30%
17番  1-  1-  0- 13/ 156.70%13.30%13.30%
18番  1-  0-  1- 11/ 137.70%7.70%15.40%
偶数 12-  9- 15-133/1697.10%12.40%21.30%
奇数  8- 11-  5-147/1714.70%11.10%14.00%
大外  1-  0-  1- 18/ 205.00%5.00%10.00%

7枠が5勝をあげているが、内からもそれなりに勝ち馬・連対馬がでていて内・外だけで有利不利を判断するのは難しい状況。なお、5枠の4勝はすべて直近10年以内のもの。また、偶数馬番の成績の方が優れている傾向が強く、直近10年ではその傾向がより顕著になっている(勝率・連対率・複勝率とも偶数馬番の率が奇数馬番の2倍近い)。

安田記念 過去20年 人気別の傾向

人気着別度数勝率連対率複勝率
1番人気  4-  3-  3- 10/ 2020.00%35.00%50.00%
2番人気  3-  2-  1- 14/ 2015.00%25.00%30.00%
3番人気  2-  4-  2- 12/ 2010.00%30.00%40.00%
4番人気  2-  1-  2- 15/ 2010.00%15.00%25.00%
5番人気  0-  3-  3- 14/ 200.00%15.00%30.00%
6番人気  1-  2-  1- 16/ 205.00%15.00%20.00%
7番人気  3-  0-  0- 17/ 2015.00%15.00%15.00%
8番人気  3-  1-  1- 15/ 2015.00%20.00%25.00%
9番人気  2-  0-  2- 16/ 2010.00%10.00%20.00%
10番人気  0-  2-  2- 16/ 200.00%10.00%20.00%
11番人気  0-  0-  0- 20/ 200.00%0.00%0.00%
12番人気  0-  0-  2- 18/ 200.00%0.00%10.00%
13番人気  0-  1-  0- 18/ 190.00%5.30%5.30%
14番人気  0-  0-  0- 19/ 190.00%0.00%0.00%
15番人気  0-  0-  1- 16/ 170.00%0.00%5.90%
16番人気  0-  1-  0- 16/ 170.00%5.90%5.90%
17番人気  0-  0-  0- 15/ 150.00%0.00%0.00%
18番人気  0-  0-  0- 13/ 130.00%0.00%0.00%

1番人気は過去20年で4勝複勝率5割も、直近過去10年で3勝複勝率80%。距離の棲み分けが顕著になり「強いマイラー」がここを大目標に仕上げてくるようになったことの影響が大きいと思われる。ただ、安田記念をきっかけに「超一流馬」としてのキャリアを積み始める馬も多く、先物買いできる馬をうまく見つけられるかがポイント。

安田記念 過去10年の配当

 単勝配当馬連馬単3連複3連単
201267085101392092530468600
2013400147025701816062800
2014170187302033091160373470
20153701740268040690127190
2016369032301158014990153560
20171240104802041043500283000
20181570737015290656063280
20191920567013660369043720
20201200650284084011240
202147602950120908860110420
最低配当170650257084011240
最高配当4760187302041092530468600
中間値122044501287516575118805

2020年グランアレグリアが1200円、2019年インディチャンプが1920円、その後の活躍を考えると明らかに人気がなさ過ぎるといえるが、安田記念はまさにそういうレース。また実力拮抗のメンバーで連複・連単系のオッズが割れやすいレースであるともいえるので、妙味の高い券種を上手にチョイスすることが重要。

安田記念 過去20年 前走レース(ローテーション)別の傾向

京王杯SCが3勝2着5回と最も多くの連対馬を出しているが、近年では京王杯組は不振で2017年のサトノアラジン以来馬券絡みがない。高松宮記念からのローテーションで勝利した3頭はいずれも高松宮記念で連対。400mの距離延長を克服するには高松宮記念を完勝できるだけの能力が必要ということか。ヴィクトリアマイル組も近年2008年・2009年のウォッカの勝利が最後で、そのあとは2着続き。ただ、2018年2019年アエロリット・2020年アーモンドアイ・2021年グランアレグリアと4年続けての2着で、これをプラスととらえるか、アーモンドアイ・グランアレグリアでも(中2週でのGⅠ連戦では)勝てなかったと捉えるかは難しいところ。
また、長欠明け・海外遠征帰りはマイナスにはならず、きちんと仕上げて臨んでいれば全く問題ない。2021年もダノンキングリーが前年天皇賞(秋)以来の休み明けで一発回答。

安田記念 過去20年 年齢・性別の傾向

年齢着別度数勝率連対率複勝率
3歳  1-  0-  1-  3/  520.00%20.00%40.00%
4歳  5-  6-  5- 60/ 766.60%14.50%21.10%
5歳  4-  8-  5- 93/1103.60%10.90%15.50%
6歳  9-  2-  8- 70/ 8910.10%12.40%21.30%
7歳  1-  4-  1- 38/ 442.30%11.40%13.60%
8歳  0-  0-  0- 15/ 150.00%0.00%0.00%
牝馬  3-  5-  2- 27/ 378.10%21.60%27.00%

6歳馬が9勝と最多勝も2017年のサトノアラジンが最後でその後は4歳馬に押され気味。さらに2021年にはNHKマイルから臨んだ3歳馬シュネルマイスターが3着に入り若返り化のトレンドになりつつある雰囲気。牝馬3勝はウォッカ2勝とグランアレグリア。2着もアーモンドアイ・グランアレグリア・アエロリットと近年の例はいずれも一流牝馬(かつ東京巧者)によるもの(下記参照)。

安田記念 過去20年 3着以内の牝馬一覧

馬名年齢人気着順
2021グランアレグリア512
2020グランアレグリア431
2020アーモンドアイ512
2019アエロリット532
2019アーモンドアイ413
2018アエロリット452
2009ウオッカ511
2008ウオッカ421
2007ジョリーダンス693
2005スイープトウショウ4102

安田記念 過去20年 種牡馬別の傾向

ディープインパクト産駒が4勝。しかもこの4勝のすべては「1番人気以外」。最も単勝が安かったのはアーモンドアイの1200円(3番人気)。近年のディープインパクト産駒は「人気ではない」ところで勝つ傾向が見受けられるので意識しておきたい。
全体的にはスピード一辺倒という血統ではなくロベルト系・ノーザンダンサー系のような持久力にも裏付けのある種牡馬が強いレースといえる。

安田記念 過去20年 騎手別の傾向

川田が2勝も人気サイドで惨敗しているレースも多くピンパー気味なので注意が必要。人気なりに安定した結果を出しているのは福永・ルメール。

安田記念 過去20年の傾向と分析 まとめ

  • 11秒台のラップが続きスピードの持続力が強く求められるレース
  • 1000m58~57秒ー上がり34秒台の早い時計への対応力
  • 差し優勢も先行勢の粘り込みに注意
  • 偶数馬番
  • 人気薄のディープインパクト産駒
  • ロベルト系・ノーザンダンサー系