日本ダービー 過去20年の傾向と分析

イギリスのダービーを模範として世代頂点を決める種牡馬選定レースとして1932年に創設された。創設当初は、目黒記念の由来となっている目黒競馬場での開催。
正式名称は「東京優駿(日本ダービー)」だが、副称である日本ダービーあるいは単にダービーと呼ばれることの方が多い。いわゆる五大競争(皐月賞・東京優駿・菊花賞・桜花賞・優駿牝馬)の頂点に立つレースで、第3回目に開催場が府中競馬場(現在の東京競馬場)に変わった後は、他の競馬場では一度も実施されていない。

日本ダービー 過去20年のラップタイム

馬場20040060080010001200140016001800200022002400勝ちタイムRPCI
200212.811.312.612.612.412.312.412.012.211.711.612.302:26.252.6
200312.411.112.912.612.112.613.612.812.112.111.512.702:28.551.7
200412.510.611.311.511.711.812.513.012.511.511.712.702:23.346.2
200512.510.912.112.112.312.312.312.112.211.911.011.602:23.355.2
200612.611.813.012.812.312.712.912.512.011.511.812.002:27.957.2
200712.610.912.312.612.112.112.712.612.211.411.411.602:24.557.6
200812.510.612.412.912.412.812.312.212.211.812.212.402:26.748.3
200912.811.011.812.112.212.413.213.814.713.212.913.602:33.739.5
201012.611.312.212.712.813.513.112.912.411.310.811.302:26.968.8
201112.711.312.813.112.513.013.212.812.612.312.212.002:30.553.5
201212.810.812.011.711.811.712.212.412.311.712.012.402:23.845.7
201312.310.512.212.512.811.912.712.311.911.611.711.902:24.352.2
201412.510.611.812.212.512.112.713.612.211.611.111.702:24.657.9
201512.710.911.811.711.712.512.512.412.411.911.011.702:23.254.3
201612.611.111.912.112.312.913.111.812.011.611.011.602:24.058.3
201713.011.212.912.813.312.512.112.612.711.510.911.402:26.965.9
201812.711.012.312.412.412.312.212.011.711.211.212.202:23.655.0
201912.710.711.411.411.612.012.312.412.212.011.912.002:22.650.1
202012.611.312.912.612.311.812.212.311.811.311.311.702:24.157.8
202112.210.612.213.012.312.412.811.711.411.510.811.602:22.557.9

フルゲート必至の競馬となることもありオークスと同様に1コーナーまでは早めのペースで流れる。全体的なペースもオークスよりは早く、その分だけ直線でのペースアップの程度(PCIの値)は低くなる。しかし、東京コースでのレースなので道中がハイペースで流れた場合でも「早い上がり」が要求される(レース平均34.9(良馬場))。

日本ダービー 1~3着馬の脚質分布

フルゲート、2400m、淡々と流れるペース、早い上がりと逃げ馬には苦しい要素が揃いやすいレース。実際にも逃げて3着内に入った馬は、道中の通過順位を検索可能な1986年以降でわずかに7頭(3-3-1-29)で、逃げ切り勝ちは1997年のサニーブライアンが最後。ただ、オークスよりは前の馬が馬券になる率は圧倒的に高い。例年のローテーションでは、ダービー週から仮柵がBコースからCコースにかわることからトラックバイアスにも十分注意したいところ。

RPCIと勝ち馬の上がり3Fタイムの分布

  • 黄色・・・良馬場
  • 赤丸・・・ハイペース(前半1000m58秒未満)
  • 緑丸・・・稍重
  • 茶丸・・・重
  • 青丸・・・不良

不良なのに良馬場と遜色ないレース上がりで勝ったオルフェーヴルや1000m通過57秒台のハイペースを先行からレコードタイム(当時)で押し切ったキングカメハメハの強さはいうまでもないとして、道中がそれなりに流れたとしても勝ちきるにはポジションを問わず早い上がりが必要。12番人気の勝利で周囲を驚かせたロジャーバローズも1000m57.8の流れを2番手から35.1。トラックバイアスの恩恵があったとしても強い内容で早期引退が本当に悔やまれるところ。
ダービーで気を付けておかなければいけないのは、勝ち馬=上がり3F最速と限らない点で、オークスの直近10年勝ち馬のうち7頭が上がり最速1位だったのに対し、ダービーではわずかに3頭で上がり3F6位以下の馬(4勝)よりも勝利数が少ないという点。

日本ダービー 過去20年 枠番・馬番別の傾向

枠番 着別度数 勝率 連対率 複勝率
1枠 7- 3- 1-29/40 17.5% 25.0% 27.5%
2枠 3- 2- 3-32/38 7.5% 12.5% 20.0%
3枠 3- 2- 1-34/40 7.5% 12.5% 15.0%
4枠 0- 5- 4-30/40 0.0% 12.8% 23.1%
5枠 2- 1- 1-36/40 5.0% 7.5% 10.0%
6枠 2- 5- 2-31/40 5.0% 17.5% 22.5%
7枠 2- 1- 5-51/60 3.4% 5.1% 13.6%
8枠 1- 1- 3-54/58 1.7% 3.4% 8.5%

馬番着別度数勝率連対率複勝率
1番  5-  3-  1- 11/ 2025.00%40.00%45.00%
2番  2-  0-  0- 18/ 2010.00%10.00%10.00%
3番  3-  1-  3- 13/ 2015.00%20.00%35.00%
4番  0-  1-  0- 19/ 200.00%5.00%5.00%
5番  3-  1-  0- 16/ 2015.00%20.00%20.00%
6番  0-  1-  1- 18/ 200.00%5.00%10.00%
7番  0-  3-  3- 13/ 190.00%15.80%31.60%
8番  0-  2-  1- 17/ 200.00%10.00%15.00%
9番  0-  1-  0- 19/ 200.00%5.00%5.00%
10番  2-  0-  1- 17/ 2010.00%10.00%15.00%
11番  0-  2-  2- 16/ 200.00%10.00%20.00%
12番  2-  3-  0- 15/ 2010.00%25.00%25.00%
13番  1-  1-  1- 17/ 205.00%10.00%15.00%
14番  1-  0-  2- 17/ 205.00%5.00%15.00%
15番  0-  0-  2- 18/ 200.00%0.00%10.00%
16番  0-  1-  0- 19/ 200.00%5.00%5.00%
17番  1-  0-  1- 18/ 205.00%5.00%10.00%
18番  0-  0-  2- 16/ 180.00%0.00%11.10%
偶数  7-  8-  7-156/1783.90%8.40%12.40%
奇数 13- 12- 13-141/1797.30%14.00%21.20%
大外  0-  0-  2- 17/ 190.00%0.00%10.50%

1枠が20年で7勝(10年でも2勝2着2回)と抜けた成績。また直近10年のうち1~3枠が5勝で、全体傾向としても内枠優勢が顕著。すでに触れたように、この傾向はダービー週から仮柵を動かすことによる影響によるもの(下記参照)。それ以前の仮柵ローテーション(オークス・ダービー共に同じ仮柵での実施)の枠番傾向と比較するとその違いが顕著(下記参照)。

【参考】1992年~2002年の枠番別着度数

現行の仮柵ローテション(オークス:Bコース→ダービー:Cコース)になったのは2003年からで、それ以前はオークス・ダービー共に同じ仮柵位置で実施されていた。1992年はA1コース、1993・1994年はA2コース、1995年~2002年はBコースでの実施。

また、この10年の脚質別の着度数(上記の表)をみると、いまのダービーよりも明らかに差し馬・上がり3F1位の馬が強かったこともみてとることができる。なお、逃げて勝った2頭は、1992年ミホノブルボン、1997年サニーブライアンでいずれも2冠馬。

日本ダービー 過去20年 人気別の傾向

1番人気は過去20年で10勝も直近過去10年では3勝にとどまるが、1・2着は人気サイドで決まる傾向が強い傾向。ただし、3着については6番人気以下の占拠率が50%を超えていて「人気薄が飛びこんでくる」ということを前提に馬券を組み立てた方がよさそう。

日本ダービー 過去10年の配当

単勝配当馬連馬単3連複3連単
20128505680101801416087380
201329097016001713054950
2014560850186027470103300
201519019802220395015760
201640070014208504600
201753016202860222011870
201812507950155205216002856300
20199310112004709012050199060
202014027035024805140
2021117010103360880058980
最低配当1402703508504600
最高配当931011200470905216002856300
中間値545131525401042556965

上でも触れたように1・2着は5番人気までの人気サイドで決まる年が多く基本的には固めの配当。ただ、3着には高配当の使者が飛びこんでくるケースが多いので、3連系の3頭目は手広く構えておいて配当跳ねを期待できるレースであるともいえる。

3着に飛びこむ穴馬の傾向

3着に飛びこんでくる穴馬は概ね次のタイプに整理できる。

  • 皐月賞を(人気薄で)好走を軽視された馬
  • 皐月賞を人気で敗れた馬ことで一気に評価が下がった馬
  • 前走トライアル(京都新聞杯・青葉賞)での1・2着を軽視された馬
  • 直近レースの成績が悪い重賞勝ち馬

最も狙いやすいのは皐月賞で結果を出していたにもかかわらずダービーで人気にならなかったタイプで、2021年ステラヴェローチェ(皐月賞6番人気3着→ダービー9番人気3着)、ドリームパスポート(皐月賞10番人気2着→ダービー7番人気3着)などがいる。

日本ダービー 過去20年 前走レース(ローテーション)別の傾向

圧倒的に前走皐月賞組が強い傾向。これに続くのが前走NHKマイル組で、2002年タニノギムレット・2004年キングカメハメハ・2008年ディープスカイの3勝。しかし、このローテーションが流行っていたのは少し前の話で、ディープスカイを最後に馬券絡みの例はないし、出走頭数それ自体も減っている。それに代わって近年台頭しているのは京都新聞杯組で、2013年キズナ、2019年ロジャーバローズの2勝のほか2着3回の好成績。本番と同コースで行われる青葉賞からは2着が5回あるものの勝ち馬はいまだ出ていない。また、今後は、京都新聞杯・青葉賞よりも本番までの間隔がとれ、東京コースと同じ上がり勝負での決着になりやすい毎日杯からのルートの馬が増えていくと思われるので注目しておきたい(2021年のシャフリヤールがこのローテーション)。

日本ダービー 過去20年 キャリア別の傾向

キャリア着別度数勝率連対率複勝率
  0戦  0-  0-  0-  0/  0
  1戦  0-  0-  0-  0/  0
  2戦  0-  0-  0-  0/  0
  3戦  1-  0-  0- 10/ 119.10%9.10%9.10%
  4戦  4-  5-  2- 37/ 488.30%18.80%22.90%
  5戦  5-  7-  6- 59/ 776.50%15.60%23.40%
  6戦  5-  5-  7- 62/ 796.30%12.70%21.50%
  7戦  2-  0-  1- 55/ 583.40%3.40%5.20%
  8戦  1-  1-  3- 26/ 313.20%6.50%16.10%
  9戦  0-  2-  1- 23/ 260.00%7.70%11.50%
  10戦  2-  0-  0- 13/ 1513.30%13.30%13.30%

キャリア4~6戦がボリュームゾーン。直近過去10年ではこの傾向がより顕著でそれよりも多くても少なくても割引。キャリア8戦で勝った2014年のワンアンドオンリーは初勝利まで要したことがキャリア過多になった原因で暮れにラジオNIKKEI賞(ホープフルSの前身レース)を制したあとは弥生賞→皐月賞→ダービーの当時の王道ローテーション。キャリア3戦でダービーに臨み勝利を手にしたシャフリヤールも、2戦目となる共同通信杯は皐月賞馬エフフォーリアの3着で東京コースを経験し3戦目の毎日杯ではレコード勝ちと早い時計での決着も克服していて、キャリアの少なさを補えるだけの能力を既に示していた。新馬→1勝クラス(少頭数のOP)とスローの競馬を派手に2連勝したことで人気になるようなタイプは割り引いて考えたい。

日本ダービー 過去20年 種牡馬別の傾向

「ダービー馬はダービー馬から」と言われるようにダービー馬(ダービー好走馬)がずらりと並ぶ。なかでもディープインパクト産駒の強さは特筆で他の種牡馬を圧倒する7勝。しかも、12番人気(ダービー馬の中で最も人気薄)で勝利したロジャーバローズをはじめ1番人気ではない馬の勝利が5勝。ディープインパクト産駒がダービーを走る機会もかなり限られてしまうが「妙味があるのは注目度の低い伏兵」ということは覚えておきたい。

【参考】日本ダービーで3着以内に入ったディープインパクト産駒一覧

馬名人気着順
2021シャフリヤール41
2020コントレイル11
2019ロジャーバローズ121
2019ダノンキングリー32
2018ワグネリアン51
2017アドミラブル13
2016マカヒキ31
2016サトノダイヤモンド22
2016ディーマジェスティ13
2015サトノラーゼン52
2013キズナ11
2012ディープブリランテ31
2012トーセンホマレボシ73

日本ダービー 過去20年 騎手別の傾向

騎手着別度数勝率連対率複勝率
福永祐一 3- 2- 0-14/1915.80%26.30%26.30%
武豊 3- 1- 1-14/1915.80%21.10%26.30%
横山典弘 2- 2- 0-11/1513.30%26.70%26.70%
四位洋文 2- 1- 2- 6/1118.20%27.30%45.50%
M.デムー 2- 0- 1- 6/ 922.20%22.20%33.30%
岩田康誠 1- 1- 2- 8/128.30%16.70%33.30%
安藤勝己 1- 1- 1- 7/1010.00%20.00%30.00%
C.ルメー 1- 1- 1- 3/ 616.70%33.30%50.00%
池添謙一 1- 0- 1- 9/119.10%9.10%18.20%
川田将雅 1- 0- 1-13/156.70%6.70%13.30%
内田博幸 1- 0- 0-11/128.30%8.30%8.30%
浜中俊 1- 0- 0- 7/ 812.50%12.50%12.50%
石橋守 1- 0- 0- 0/ 1100.00%100.00%100.00%
蛯名正義 0- 2- 2-12/160.00%12.50%25.00%
戸崎圭太 0- 2- 0- 6/ 80.00%25.00%25.00%
後藤浩輝 0- 1- 1- 4/ 60.00%16.70%33.30%
柴田善臣 0- 1- 0-10/110.00%9.10%9.10%
佐藤哲三 0- 1- 0- 3/ 40.00%25.00%25.00%
D.レーン 0- 1- 0- 1/ 20.00%50.00%50.00%
小牧太 0- 1- 0- 8/ 90.00%11.10%11.10%
横山武史 0- 1- 0- 1/ 20.00%50.00%50.00%
岡部幸雄 0- 1- 0- 1/ 20.00%50.00%50.00%
松岡正海 0- 0- 1- 8/ 90.00%0.00%11.10%
勝浦正樹 0- 0- 1- 3/ 40.00%0.00%25.00%
K.デザー 0- 0- 1- 2/ 30.00%0.00%33.30%
C.ウィリ 0- 0- 1- 4/ 50.00%0.00%20.00%
石橋脩 0- 0- 1- 3/ 40.00%0.00%25.00%
吉田隼人 0- 0- 1- 0/ 10.00%0.00%100.00%

福永が3勝2着2回で現役最多。しかも、このすべてが10年以内。直近4年で3勝は圧巻。ただ、福永騎手の場合は、オークスも似たように短期間で3勝の固め打ちをしていて、その後は長く馬券絡みなし、ダービーも同じようなことになるのでは・・・という気がしないでもない。直近過去10年で複数の馬券絡みがあるのは、福永の他に、ルメール・岩田・川田・デムーロのあわせて5人。

日本ダービー 過去20年の傾向と分析 まとめ

  • 道中のペースにかかわらず「早い上がり」が必須。
  • ペースの鍵を握るのは向正面でのかけひき
  • 逃げ馬苦戦・差し馬有利もトラックバイアスの影響に注意
  • 3着ヒモ荒れに警戒
  • 皐月賞好走馬は人気薄でも軽視禁物
  • 皐月賞以外の別路線組を馬券に組み込む
  • 内枠
  • キャリア4~6戦
  • 人気サイドではないディープインパクト産駒
  • 福永・ルメール・デムーロ・川田・岩田

こちらの記事もあわせてお読みください

2019年世代7522頭の頂点を決めるレース。出走馬18頭が決まったところで、今年のダービー馬に最も近いと思われる馬をプロファイリ...