GⅠ馬が5頭出走の豪華メンバーとなった札幌記念。なかでもパンサラッサ・ジャックドールの2頭が並んだ馬番になったことで、どちらがハナをとるのかという点に注目している人も多いはず。
札幌記念 パンサラッサ対ジャックドール 逃げるのはどちら?
逃げ馬の3タイプ
ひとくちに「逃げ馬」といっても、その馬のラップの刻み方(逃げるペース)で、逃げ馬は次の3つのタイプに分類することができる。
- 前半ハイペースタイプ(前半型)
- 平均ペースロンスパタイプ(平均型)
- 前半スロー高速上がりタイプ(後半型)
上の3タイプを2000m戦の仮想のラップタイムでグラフ化したものが下の折れ線グラフ
「逃げる」という戦法それ自体は直線に入る段階までに後続との間に「セーフティリードをつくる」ためのものであり、タイプの違いは「セーフティリードをいつ作るか(どのように作るか)」という違いでもある。前半型は、いわゆる「大逃げ」となるケースが多く、古くはツインターボなどがその典型例。平均型はスタミナに優れたワンペース型の馬でメジロパーマーはこの手のタイプだが、前半型・平均型ともに、いまの「競馬のスタイル」の主流から離れるので近年では該当するような馬がめっきり減った。後半型はいわゆる「スローの逃げ残り」の典型パターンで「近年の逃げ馬」の主流。「時計の早い高速馬場」を味方につけられたレースでは猛烈な強さを発揮するタイプでもある。。
パンサラッサ・ジャックドールの「逃げスタイル」の違い
パンサラッサは「前半型」
パンサラッサのスタイルは、近年では非常に珍しい「前半から飛ばす」いわゆる大逃げ型。近年でいえばサイレンススズカに近いまさに「快足逃げ」タイプの逃げ馬。
サイレンススズカ中山記念(1998年)との比較
サイレンススズカとの比較でもっともわかりやすいのは、中山記念のレースラップ比較で、どちらもラップの緩みやすい1・2コーナーから向正面にかけてもペースを落とさずにスピードの違いでゴールまで押し切る競馬をしていることがよくわかる。
また、パンサラッサのレースラップの推移を観察してみると、レースを重ねるごとに「大逃げ馬」としてのレース振りにも進化がみられることがわかる。距離は1800mがベストであることは間違いなさそうといえるが、2200mの距離をタイトルホルダーのマークを受けながら逃げることになった宝塚記念で失速率を改善できている点は大きく評価してよい。ちなみに宝塚記念での2000m通過タイムは1分57秒8なので、時計的には十分早い。
ジャックドールは「後半型」
ジャックドールは近年主流の中盤でラップをしっかりおとして「早めスパートの早い上がり」で押し切るタイプのいわゆる「溜め逃げ」型の逃げ馬。ジャックドールにサイレンススズカの姿を重ねるような見解を見聞きすることも少なくないが、サイレンススズカは溜め逃げタイプ(ギアチェンジタイプ)ではないので、逃げ馬としてのタイプは明らかに異なる。
ジャックドール自体は、キャリアを重ねるにつれて早いラップ(厳しいラップ)へも順応してきている点では成長ぶりがうかがえる。その他方で、白富士S・金鯱賞ともに「高速馬場」を味方につけての勝利だった点は否めず、そのあたりの「壁」が浮き彫りになったのが大阪杯といえる。
札幌記念で逃げるのはパンサラッサ
逃げ馬としてのタイプが異なるので、「双方がいままでどおりの競馬」をするのであれば、パンサラッサがハナに立ち、ジャックドールは2番手(もしくは3番手以下)となる可能性が高いといえそう。そうであれば、札幌記念の展開上のポイントは次のように整理できると思われる。
- パンサラッサがどの程度のペースで逃げるのか
- ジャックドールは「2番手以下」&「今までの勝ちパターンとは異なる展開」でも強い競馬ができるのか
- 2番手以下の馬がパンサラッサを追いかけにいくのかどうか
パンサラッサは、完全に「自分との戦い」。平坦・小回り・直線の短いコースという舞台設定、宝塚記念からの距離短縮はプラス材料。「洋芝競馬」の克服が鍵となるが、力の要る馬場それ自体は得意なタイプで、むしろ降雨なども歓迎な馬。
ジャックドールは、強い勝ち方で連勝してきたこれまでの競馬とは全く質の違う競馬が求められることになり、本当に試金石となる一戦。ただ、ロベルト系のモーリス産駒であることを考えると「ロングスパート戦になること」がプラスにでる可能性も十分で、「札幌の方がパフォーマンスをあげられる」という可能性も否定できない
今年の札幌記念の展開予想では、逃げ馬2頭の対決がクローズアップされがちであるが、実際に競馬のカギを握りそうなのはソダシのポジション取り。ソダシとジャックドールの位置関係はレース展開・結果にも大きな影響を与える。ソダシ自体は、緩急のついたギアチェンジ型のラップよりは、ロングスパート型のラップの方が強いタイプなので、筆者であればジャックドールのすぐ後ろでプレッシャーをかけ続ける乗り方をしたいと考えるが・・・。
札幌競馬場芝コースのラップタイム状況
上の折れ線グラフは、先週日曜日およびレース前日(8/20)に札幌芝1800m・2000mで実施された2歳戦を除いたレースラップの比較。今年の札幌芝1800m・2000m戦は、「過去5年の平均よりも前半が流れない割に逃げ馬が残せていない」というのが大きな特徴。下の表(今年の札幌芝1800m・2000mで行われた1勝クラス以上のレースにおける上がり3F地点での先頭からの差ごと着度数)をみてもわかるように、逃げて勝った馬は、7/31の1勝クラス(ウインチェレステ)の1頭だけ。今日(8/20)7Rでは、オオキニが超スローペースに持ち込んで逃げ切り勝ちを果たしているがこれは未勝利戦。
【参考】札幌芝1800m・2000m戦における残り600m地点先頭差別の着度数
ラップタイム傾向としては、1周コースの中距離戦では「平均ペースが続く息の入りづらいロングスパート戦」になる傾向が強く逃げ切り勝ちのハードルが高い。今年の札幌芝1800・2000mは例年よりも1コーナーまでが流れないことで、逆にその後のロングスパート戦傾向を強めさせているという仮説を立てることができる。
札幌記念 高配当の使者は・・・?
「前の馬」ばかりがクローズアップされる今年の札幌記念。前の馬には競馬のしづらい(厳しい)流れになりそうな雲行きなだけに、「前の人気馬」よりは「中団以降の人気薄」を狙い撃ちたい。
高配当の使者として白羽の矢を立てたのは「⑯アンティシペイト」と「⑥グローリーヴェイズ」。アンティシペイトは前走七夕賞・前々走福島民報杯ともに、ロングスパートラップでマクリ気味の競馬。「長く脚を使わせてこそ」のタイプで今の札幌芝2000mにぴったりのタイプ。昨年夏(8/28)に同じCコース芝2000mを勝っている実績があることもプラス。昨年のように時計の早い決着では分が悪いのは事実だが、今年の想定勝ち時計(2分2秒台)であれば馬券内まで浮上する可能性は低くない。
もう1頭は、ドバイ以来の休み明けとなるグローリーヴェイズ。京都大賞典・天皇賞の好走歴から2000mは短いのではないか?という声もありそうだが、この馬にとっては「平坦の1周コース」であることが非常に重要で札幌芝2000mはまさにその舞台。同じ洋芝・1周コース・平坦コースの香港で国際G1連対2回の実績は当然ここでも最有力。
札幌記念 予想 買い目
- ワイド ⑥ ⑩ ⑯ ボックス
- 三連複 下記フォーメーション 19点
合わせてお読みいただけると幸いです