クラシック登録制度 追加登録料200万円也

3歳5大競争(皐月賞・日本ダービー・菊花賞・桜花賞・オークス(優駿牝馬))に競走馬を出走させるためには、それぞれのレースごとに特別の事前登録(3歳馬5大特別競争登録:クラシック登録)をする必要があります。この登録がなければ、トライアルレースで優先出走権を獲得したとしてもいわゆる3冠レースへの出走は認められません。

日本におけるクラシック登録の仕組み

2021年~2022年シーズン(2019年生まれ3歳クラシック)における特別登録は次の日程・登録料によって5つのレースそれぞれについて実施されています。

クラシック登録登録締め切り日登録料
第1回登録2021年10月22日正午1万円
第2回登録2022年1月28日正午3万円
第3回登録それぞれのレースの2週前36万円

たとえば、皐月賞に出走するためには、2歳シーズンの10月22日までに1万円、3歳になった1月下旬にさらに3万円の登録料を支払った上で、皐月賞の2週前の日曜までに36万円を支払って最後の登録をする必要がありますので、登録料の合計は40万円になります。なお、この登録料の当該レースの賞金として組み込まれますが詳しくは後に別途触れることにします。

クラシック登録を行う競走馬の数

クラシック登録を済ませた馬についてはJRAが公表している名簿にて確認することができます。この名簿を実際にみてもらうのが一番よいのですが、特に初回登録は競走馬が2歳のうちに締め切られますので、その時点ではデビューしていない馬も含まれていますし、場合によっては「馬名すら決まっていない」というケースもないわけではありません(この場合は、父名・母名で競走馬を特定します)。

また、これも当然といえば当然のことですが「クラシック登録をしない」という選択をするケースもあります。第2回までのクラシック登録を済ませた競走馬の数は下記のとおりで、実際には「クラシック登録をしない馬」の方が多いのです。登録した馬がそのレースに出走しなかった(できなかった)場合には登録料は返還されるのですが、クラシックレース出走は本当に狭き門ですから、「私の馬で出走するのは難しいだろう」と考える馬主さんが少なくないとしても不思議なことではありません。

登録頭数桜花賞皐月賞オークス日本ダービー菊花賞
第1回12811231117612181162
第2回567536614612643

追加登録制度

ここまで説明してきた原則に基づけば、クラシック登録がない以上は弥生賞や青葉賞などのトライアル競走で優先出走権を獲得したとしても皐月賞・ダービーに出走することは不可能です。しかし、以上のように、第2回までのクラシック登録を行わない競走馬が圧倒的多数という状況になれば、「クラシック登録のない馬が優先出走権を得てしまう」という事態は必ず生じます。実際にこのような事態が生じ大きな話題になったのが、競馬ファンなら誰もが知っているであろう「オグリキャップ」です。地方競馬所属(笠松競馬)として競走馬としてのキャリアをはじめたオグリキャップは、4歳(現3歳)になって中央に移籍すると連戦連勝・・・。皐月賞もダービーも勝てる器と噂になっていましたが「クラシック登録がない」ということで出走がかないませんでした。当時は、現在ほど中央と地方の交流も盛んではありませんでしたから「オグリキャップで3冠レース」ということを想定できないのは致し方ないことでした。しかし、「優秀な競走馬を選定する」というクラシック競走の意義の観点からも、興行的な観点からも「世代最強かもしれない馬」が「事前登録がない」という理由だけでクラシックレースに出られないということも好ましい状況ではありません。

そこで1992年に「追加登録制度」が設けられ、第1回・第2回の登録に間に合わなかった競走馬であっても追加登録をすれば、クラシックレースへの出走が可能となりました。ただし、追加登録の際には、追加登録料として「200万円」の登録料を支払う必要があります。通常の登録にかかる費用(40万円)の5倍の金額です。

この追加登録制度の適用第一号は1992年のウィーンコンサートでしたが、追加登録をして臨んだ桜花賞では10着、オークスでは18着と残念な結果に終わっています。

ちなみに、このような制度は外国の主要レースでも採用されていて、凱旋門賞などでは「日本円にして1000万を超える追加登録料を支払って出走に踏み切った馬がいる」と話題になることもあります。

追加登録をしてクラシックレースを勝利した主な馬

  • 1999年 テイエムオペラオー(皐月賞)
  • 2002年 アローキャリー(桜花賞)
  • 2002年 ヒシミラクル(菊花賞)
  • 2013年 メイショウマンボ(オークス)
  • 2014年 トーホウジャッカル(菊花賞)
  • 2015年 キタサンブラック(菊花賞)

登録料の使い道

最後に、登録料がどのように使われるのかということについて触れておきたいと思います。5大競争だけでなく、他のG1・重賞競走および特別戦において馬主から徴収した登録料(レースの格に応じて金額が定まっています)は「賞金の一部に充てなければならない」と競馬法によって定められています(競馬法18条)。わたしたちが賞金として目にする金額は「本賞金」と呼ばれるものでJRAが負担していて、登録料は「付加賞」として、1着70%、2着20%、3着10%の割合で馬主に交付されることになります。したがって、クラシックレースの1着馬の場合には付加賞だけでも500万円(以上)の金額となります。

特別戦は馬主同士の賭博

これは余談ですが、以上のように、特別登録の制度は「馬主が出し合った金銭を馬の着順によって配分しなおす」という仕組みであるため、「偶然の出来事による勝負によって財物の得喪を決める行為」であり「賭博行為」に該当します。ただ、競馬法は刑法(賭博罪)の特別法という位置づけになる法律であり、その競馬法が許容している特別登録料制度は「特別法は一般法に優先する」という法原則によって私たちが購入する馬券(勝馬投票券)による賭博と同様の取扱い(賭博罪に問われない)になります。
実際にも、追加登録の制度は、200万円を支払って2億円(ダービーの本賞金)のリターンを狙うような仕組みなので、まさにギャンブルなのかもしれませんが、「愛馬をクラシックに出走させる」というお金では買えないものを求めている馬主さんの方が多いのかもしれません。

2022年オークス・日本ダービーで追加登録をする競走馬

  • ライラック(オークス)
  • ラブパイロー(オークス)
  • ヴェローナシチー(日本ダービー)
  • セイウンハーデス(日本ダービー)

筆者が名簿を見て確認したかぎりなので間違いがあったときはすいません。