天皇賞(春)タイトルホルダーは逃げ切れるか

天皇賞(春)の枠番が確定し、人気が予想されるディープボンドは大外8枠18番、昨年の菊花賞馬タイトルホルダーは同じく8枠16番。コーナーを6回まわる天皇賞(春)は内枠有利(外枠不利)というのが定説。今回は、確定した枠番・馬番をふまえた上で当日の展開を予想。

【天皇賞過去20年の傾向データ】

天皇賞(春)のラップタイムやレースの傾向を過去20年のレース結果分析に基づいて紹介。各種のデータを表やグラフを用いてできるだけ一目でわかるように解説しています。

天皇賞(春)のコース(阪神芝3200m)

まずは天皇賞(春)が行われるコースの確認から。

天皇賞(春)の舞台となるのは阪神競馬場芝3200m。向正面からスタートして1周目は外回りコースからゴールへ向かい、2周目は内回りコースを使用するというコースレイアウト。同じ阪神競馬場で実施される阪神大賞典(昨年の菊花賞)で用いられる芝3000mコースは内回りを2周するレイアウトなので距離が200m伸びたというだけではない点に注意が必要。
以下では、スタートからゴールまでを下記の4つの区間にわけて展開上のポイントを解説。

  1. スタート→1周目3コーナー(外回り)
  2. 1周目4コーナー(外回り)→直線→1・2コーナー
  3. 向正面→2周目3コーナー(内回り)
  4. 4コーナーからゴール

スタートから1周目3コーナーまでのポイント

スタートから外回りコース3コーナーまではおよそ400m 。最内のアイアンバローズが「前にも行ける馬」であることから、それとの兼ね合いが最初のポイント。ただ、アイアンバローズは「逃げなくても大丈夫な馬」なのに対し、タイトルホルダーは「なにがなんでも逃げたい」に近いタイプの馬。8枠16番からでも注文をつけて前にとりつくことでほぼ間違いなさそう。展開場のポイントは「どちらがハナにたつか」というよりも「アイアンバローズがどこでハナを譲るか」という点。アイアンバローズがそれなりに引っ張るようだと3コーナー進入までの最初の2ハロンタイムもそれなりに早くなりうる。
大外18番からのスタートとなるディープボンドは、どこからでも競馬のできる馬なのでタイトルホルダーのスペースを上手に使いながら競馬のしやすい隊列外目のポジションにとりつき、そのすぐ内に17番ゲートからスタートするシルヴァーソニックというイメージ。テーオーロイヤルは枠なりに出たところで内目のポジションを確保、ディバインフォース、ユーキャンスマイル、ロバートソンキーあたりは後方からの競馬。15番と外目の枠を引いたタガノディアマンテも無理に出していかずに中団から後方のポジションになりそう。

1周目4コーナー(外回り)→スタンド前直線→1・2コーナー

Bコース使用時の外回り直線距離は476.3m と他場直線よりも長い。また、ゴール板200m手前から100mで1.8m登る急坂がある。この坂の上りで確実にペースを落としゆったりと1・2コーナーを回るというのがセオリーに沿った乗り方。
ちなみに、昨年の菊花賞は坂の手前となる1000m地点までは60秒で、坂の上りでペースを落として次の1000mを63.9秒まで落とせたのが大きな勝因。また、昨年の天皇賞(春)は1000m通過が59.8、直線坂下付近になる1200m地点で71.7とペースが緩まないまま1コーナーの進入をむかえていて(次の1000mは61.5秒)、少し対称的な流れといえる。

向正面→2周目3コーナー(内回り)

1・2コーナーはどの馬も距離ロスの生じない内で通りたい気持ちが強く働きやすい。そのため隊列も「1列の形」に近づき隊列も長くなりやすい。昨年の菊花賞は先頭と次の集団との間に差があったことから「ハイペース」に見えそうでも実際には、上でも述べたようにこの区間のラップは超に近いスロー。
2コーナーを抜け向正面に入ると3コーナー進入にむけてそれぞれの騎手の駆け引きも本格化する。あまりにもペースが遅すぎるようであれば、向正面からいっきにマクっていく馬もいるかもしれない。この区間でできるだけ楽をしたいタイトルホルダーと、ここで楽をさせたくない後続とのせめぎ合いが興味深い区間。

4コーナーからゴール

残り800m(3コーナー)~残り600m地点(4コーナー)から大きく動く。コーナーワークと二の足でセーフティリードを築こうとするタイトルホルダーに有力各馬がどのタイミングで仕掛けていくか、どこのコースを通っていくかがポイント。ディープボンドは昨年とほぼ同じような競馬で3・4番手の外目から直線を伺う乗り方になる可能性が高いと思われ、道中が想定外の乱ペースにならないかぎりは、「タイトルホルダーが先頭」という隊列で直線をむかえる可能性がかなり高い。
最後の直線(359,1m)では、ゴールまで残り200m地点から「100mで1.8mを登る急勾配の坂」が待ち構えそれまで3000m走ってきた各馬のスタミナを一気に奪い取る。先行勢の仕掛けが早すぎれば、昨年のワールドプレミアのようにここまで脚を温存してきた馬が一気に差し切る場面も。

まとめ 本当に2強の一騎打ち・・・?

タイトルホルダーが逃げることはほぼ間違いないと思われるものの、実際のレースでレースの流れを握るのは、タイトルホルダー(横山和生)ではなく、アイアンバローズ(石橋脩)やハーツイストワール(ルメール)・ディープボンド(和田竜二)になる可能性が高そう。「長距離戦は騎手で買え」としばしば言われるように、短距離戦などよりも「人の要素」がレースを大きく左右するのも長距離戦の醍醐味といえる。2頭揃って8枠に入ったことから、筆者個人の見解としては「2強では決まらない」という気持ちが強くなりつつあるが、最終判断は、雨になる可能性の高い週末の天気や当日のトラックバイアスなども踏まえた上で。