当サイトはレースごとのラップタイム・走破タイムという切り口から競馬を分析することをテーマにしています。
なぜなら、レースのラップタイムは、レースに影響を与えた諸要因を可視化することのできる重要な指標の一つだからです。ラップタイムにこだわることでレースを深く分析することも可能となりますし、その再現性可能性を予測することは勝ち馬予想にも役立つ場合が多いからです。
ここでは、サイト紹介をかねて、今年(2021年)の大阪杯と宝塚記念のラップタイムを例に簡単な分析をしてみたいと思います。
大阪杯・宝塚記念ともに、逃げ馬が前に残る場合の典型に近いラップパターンなのですが、中間の緩ませ方に若干の違いがあります。宝塚記念は大阪杯に比べてペースが緩むのが早く完全に「中だるみラップ」となっているのに対し、大阪杯は向正面まではそれなりのペースで流した上でスパート前にしっかりタメを効かせられていることが上のグラフから読み取ることができます。
そのため、宝塚記念では隊列も雁行状態に近く勝ち馬のクロノジェネシスも先行勢をマークできる好位に取り付けています。他方、中間のラップに緩みがなかったことから隊列が縦長になり、後続勢の追走に足を使わせることにも成功しています。ちなみに、大阪杯のラップ配分は逃げ馬が勝つラップのお手本といえますので覚えておくと役に立つことがあるかもしれません。
そうであれば、「宝塚記念ではなぜ大阪杯のように逃げなかったのか?」ということが疑問になるわけですが、この点は、宝塚記念の回顧でも触れているように「2200mへの距離延長の不安」がレイパパレ鞍上の川田騎手に強くあったということなのでしょうし、発馬直後に接触があったことから馬をなだめることを最優先させたということも考えられます(私自身は大阪杯のように乗って強気に勝ちに行くことを前提に予想を組み立てたので「川田騎手の心理を読めなかった」ということになります)。
なお、宝塚記念の最終ハロンラップはクロノジェネシスのもので、レイパパレはさらに失速しているわけですから大阪杯よりも緩いラップでいったにも関わらず終いは大阪杯より失速していることになり、現状のレイパパレにとって2200mは「最高のパフォーマンスを発揮するには長い」ということを裏付けているといえるでしょう。
最後に、コースによるラップ傾向の違いの紹介もかねて、レイパパレが秋の天皇賞で好走できるのか?ということを考察してみたいと思います。
上のグラフは昨年(2020年)の天皇賞(秋)と今年(2021年)の大阪杯のラップを比較したものです。天皇賞(秋)の舞台となる東京2000mは直線600mのワンターンコースであり、内回りの1周レース(正確には270度)となる大阪杯とはコース形態が大きく異なります。また、直線の坂の位置も東京ではゴールから400m手前、阪神はゴール直線となる点も大きく異なります。
そのため、ラップの傾向も大きく異なり、東京では残り400mの瞬発力が特に重要視されることから、これまでレイパパレが好走してきたレース傾向とはかなり異なる流れとなりますので、これから成長する可能性は否定できませんが、「レイパパレは2000mで強いタイプではない」というのが現時点での評価といえそうです。