オークス2022 勝ち馬プロファイル

出走馬18頭すべてが初距離となる2400mでの3歳牝馬女王を決める戦い。桜花賞が大混戦だっただけに、結果がガラっと変わる可能性も決して低くはなさそう。また、別路線組にも人気になりそうな馬が数頭と予想のしがいのあるレース。
今回は、オークスのこれまでのレース傾向などをふまえながら、勝ち馬像をプロファイル。

↓オークス過去20年傾向のデータの紹介↓

正式のレース名は「優駿牝馬(オークス)」。イギリスのオークスステークスにならって繁殖牝馬の選定レースとして創設された。創設当初は阪...

オークス1~3着馬の前走レース

「出走馬の前走レース」は、対戦相手(使ってきたレース)の格などが反映されることから、クラシック戦の過去傾向の中でも重要なファクターの一つ。オークス過去20年で1~3着になった馬の前走レースは上記グラフのとおり。

前走桜花賞組が勝ち馬の3/4を占めているだけでなく、1~3着馬全体の60%を占める結果に。また、前走桜花賞組が1~3着に1頭も入らなかったというケースは1988年まで遡らないと例がない。ただ、この時代は桜花賞→オークストライアル→オークスというローテーションをとる有力馬も多く、上記の1988年も桜花賞に出走馬が2着を確保。したがって、桜花賞組を完全に外して馬券を組み立てるのは少し無謀すぎるといえる。そこで、まずは前走桜花賞組についての検討から。

前走桜花賞組の桜花賞着差別着度数

上は桜花賞での着差ごとのオークスでの成績一覧で、左が過去10年、右が2007年以降のもの。2007年を区切りとしたのは現在の外回りコースで桜花賞が行われるようになった年にあわせてのもの。

桜花賞馬スターズオンアースの連覇の可能性は?

今年の桜花賞は1・2着はハナ差、5着までが0.1秒、9着までが0.2秒と本当に大接戦。レースの評価やオークスへの適正などの検討は後に行うとして、上記のデータだけで評価をすれば、秒差なしで辛勝した桜花賞馬は3頭中2頭が着外で苦戦傾向で、昨年のソダシ(桜花賞2番人気)もこの例に該当する。2着にきたのは桜花賞を1番人気で制した2014年のハープスター。スターズオンアースは7番人気での勝利だっただけに、このデータとの関係では苦しそうで、むしろ3番人気でハナ差まで迫ったウォーターナビレラの逆転の可能性の方が高いといえそう。

前走0.1秒~前走0.2秒負け組の巻き返し

桜花賞で負けた馬の巻き返し例が最も多いのが、「能力は高いがその年の桜花賞のレースとのマッチングが合わなかった」というタイプが多く存在するこの着差ゾーンで、オークスで馬券になったのは次の7頭。

馬名桜花賞オークス
2021アカイトリノムスメ42
2017ソウルスターリング31
2014ヌーヴォレコルト31
2012ヴィルシーナ22
2011ホエールキャプチャ23
2009レッドディザイア22
2008エフティマイア22

今年の前走桜花賞組でこの着差ゾーンに該当するのは下記の4頭

  • サークルオブライフ 桜花賞4着(2番人気)
  • ピンハイ 桜花賞5着(13番人気)
  • ベルクレスタ 桜花賞7着(9番人気)

この中では、サークルオブライフが抜けた存在ということはほとんどの人が疑わないところと思われる。阪神JF勝ちに、桜花賞でも決して有利とはいえない8枠から上がり最速で負けたとはいえ強い内容。残り3頭も人気にならない馬なので、むしろ積極的に残しておきたいところ。

桜花賞で0.3秒以上負けた馬が巻き返す可能性

2007年以降、桜花賞で0.3秒~0.5秒負けた馬で巻き返せたのは、2018年リリーノーブル・ラッキーライラック、2019年クロノジェネシスの3頭。0.6秒~0.9秒では、2013年メイショウマンボ(1着)、2016年のクリミナル。そこからさらに離されて負けている1秒~1.9秒負けからオークスで馬券になった馬では、2015年のルージュバックと2017年のアドマイヤミヤビの2頭。
そのほとんどに共通しているのは、「桜花賞・オークス共に上位人気だった」ということ。つまり、「桜花賞は何かしらの理由で能力を発揮しきれなかった」というタイプであるといえる。唯一の例外は2016年のクリミナルだが、こちらは離されていたとはいえ桜花賞は2着。したがって、過去データの上からは「着差・着順・人気共に振るわなかった馬の巻き返しはない」といえるが、「桜花賞で人気だった馬・桜花賞の着順がよかった馬はこの限りではない」ということになる。スピードが重視される今の競馬では桜花賞の際の能力分析は比較的精度が高いといえるだけに、「桜花賞で人気になった」ということそれ自体に大きな意義があるといえ、この消しデータの除外条件(例外)は非常に大事なファクターだと思われる。

今年の桜花賞で、0.3秒~1.9秒負けに該当しオークスにも出走してくるのは、ナミュール(0.3秒差・1番人気・10着)、プレサージュギフト(0.5秒差・4番人気・11着)、ライラック(1.1秒差・10番人気・16着)。データ上は、ナミュールとプレサージュギフトには巻き返しの可能性が十分残されているといえる。実際、ナミュールはチューリップ賞でサークルオブライフを負かしているし、プレサージュギフトは東京競馬場での重賞勝ちという強調材料がある。

ライラックは、フェアリーSで桜花賞馬を負かしているが、中山競馬場というのが評価の難しいところ。ただ、桜花賞二桁人気&着外に沈んだ馬がオークスで巻き返したというケースは2007年以降では1例もない(さらに遡れば2004年のヤマニンアラバスタの例などがないわけではない)。

前走桜花賞組からの狙い馬

サークルオブライフ・ウォーターナビレラ・ナミュール・プレサージュギフト・ピンハイ・ベルクレスタ・スターズオンアース

前走フローラS組

前走フローラS組のオークスでの成績(2007年以降)は、2-6-4-51/63。率はともかくとして前走桜花賞に次ぐ頭数を輩出している。前走フローラSから桜花賞で馬券になるタイプは、基本的には下記の3パターン

  • フローラSの勝ち馬
  • フローラSで上がり最速の脚を使った馬
  • オークスで逃げられる馬

今年のオークス出走メンバーでは、フローラSの勝ち馬であるエリカヴィータと、上がり最速で5着になったルージュエヴァイユの2頭が該当。パーソナルハイはフローラSで逃げているものの、桜花賞→フローラS→オークスのローテーションで馬券になった例は1980年代までさかのぼらないと例がなくさすがに割引。

そのほかのローテーション

桜花賞・フローラS以外のローテーションでは、2007年以降で3頭の勝ち馬を出している忘れな草は重要なステップレース。今年は、勝ち馬アートハウスが出走。また、フラワーSからも勝ち馬のスタニングローズが出走。両馬については、この後の能力・適正比較で改めてとりあげることに。なお、フラワーS組は過去30年遡ってもオークスで馬券になっておらず、そこでも負けているニシノラブウインクはかなり苦しそう。

有力馬の能力・適正比較

前走レースからの傾向で残った馬は下記の11頭。

  • スターズオンアース
  • ウォーターナビレラ
  • サークルオブライフ
  • ピンハイ
  • ベルクレスタ
  • ナミュール
  • プレサージュギフト
  • エリカヴィータ
  • ルージュエヴァイユ
  • アートハウス
  • スタニングローズ

補正タイム比較

上位90%以内上位85%以内85%未満
スターズオンアース91サークルオブライフ81プレサージュリフト76
ウォーターナビレラ91ルージュエヴァイユ80ウォーターナビレラ75
サークルオブライフ90ライラック79ナミュール75
ナミュール90スタニングローズ79ライラック73
ピンハイ89ベルクレスタ77スタニングローズ73
ベルクレスタ89ホウオウバニラ77ナミュール72
ナミュール89  スターズオンアース72
パーソナルハイ88  ニシノラブウインク72
ピンハイ87  サウンドビバーチェ71
サークルオブライフ87  サークルオブライフ70
サウンドビバーチェ87  ベルクレスタ70
プレサージュリフト86  ベルクレスタ70
ウォーターナビレラ86  アートハウス70
エリカヴィータ83    
パーソナルハイ82    

出走各馬のこれまでのレースにおける補正タイムは上記のとおり。最も早い時計は桜花賞の91。今年の桜花賞はペースも流れなかったため補正タイムの数値それ自体は低調(昨年のソダシは100)。全体的に混戦模様とはいえ、世代牝馬の頂点を決めるレースなだけに最上位から15%以内の差での時計は持っておきたいところ。
上記のモノサシでいえば、エリカヴィータのフローラSはギリギリ及第点。他方で、忘れな草賞は勝ち方は派手であったものの時計面の見劣りが否めない。数字上の評価としては「楽な相手に強い勝ち方をした」と結論づけておくのが現状では打倒。フラワーCも同様でスタニングローズは時計を詰められるかどうかがカギになる。

上がりの鋭さ

近年のオークスで勝ち負けするには「早い上がり」が必須といえる。過去20年のレース上がり平均は35.1、勝ち馬の上がり3F平均は34.2(共に良馬場時)で、「2400mという舞台で1600mの競馬をする」というイメージに近い。先週のヴィクトリアマイルも上がりが早く前残り傾向といえる決着、その前日の緑風S(2400m3勝クラス)でも勝ち馬の上がりは33.8。

上の分布図は主な有力馬の上がり3Fタイムを比較したもの(右にいけばいくほど相対的なペースが早く、上にいけばいくほど絶対的な上がりタイムが早くなる)。当然2400m戦ではないし、それぞれの距離も違うので完全に同じに扱うことは適切ではないものの、「上がり」という点に関して言えばサークルオブライフが頭2つくらいは抜けている印象で、それに次ぐのは、同じ東京競馬場でのレースであるクイーンC好走組。ナミュールは桜花賞が案外過ぎではあるが、時計だけをいえばチューリップ賞とほぼ同等の内容で「実は力通り」という可能性も。ただ、距離が伸びることで追走が楽になるのはプラスで道中が超スローとかになれば・・・というところ。

忘れな草賞のアートハウスは2勝がいずれも時計の出るコンディションでの超のつくスローペースである点や「キャリアが3戦しかない」という点は割引材料。ちなみに、これまでキャリア3戦でオークスを制した馬はすべて3戦3勝でオークスに臨んでいる。

フラワーC勝ちのスタニングローズは中山ということで上がり時計の評価になると割を食らってしまう点には注意が必要だが、デイリー杯を見る限りは「切れ比べ」になると少し分が悪そうではある。ただ、時計がかかる要因があれば馬券内に浮上できるだけの余地はまだ残されていそう。

フローラSの評価

フローラS組がオークスで通用するパターンは、2000mを鋭い上がりで差し切れるタイプか豊富なスタミナを背景に前目で押しきれるタイプ。前者の典型は昨年のユーバーレーベンや2013年のデニムアンドルビーで、後者の例は2020年のウインマリリン。今年のエリカヴィータは良くも悪くも平均的なフローラSの勝ち馬で「器用に立ち回れる」という点ではソツがないが、ストロングポイントには欠けるというタイプで「降雨などの影響でちょっと時計がかかる」とか「トリックレースになって隊列が伸びる」いったようなプラスαのファクターが欲しいところではある。ルージュエヴァイユの前走は直線で進路を確保するのに手間取って脚を余した格好。当然伸びしろはあるといえるし、戸崎騎手から池添騎手へのスイッチもおそらくプラスにでると思うので、キャリアが浅いという点に目をつぶればフローラS組から狙うのはこちらの方。

展開予想

レースは、⑩ラブパイローが主張してハナにたつ展開になると思われる。③アートハウス・⑬パーソナルハイは控えて2・3番手、①ウォーターナビレラ・②スタニングローズ・⑨エリカヴィータはさらにその後ろという隊列。折り合いをかいて競りかけるような馬がいなければペースはそこまで流れず1000m60.5秒から61秒くらいのやや遅めのペースを想定。

サークルオブライフは出たなりの位置で競馬でスターズオンアースも大外なのでそれなりの位置を取りに行く競馬になると思われ揃って道中7・8番手くらい。ナミュール・プレサージュギフト・ピンハイは例によって後方から。

土曜日にそこまでの雨にならない(馬場が痛み過ぎない)ことが前提だが、中団以降の馬は、4コーナーを外から回してから差してくるタイプよりは、内目で脚をためて直線だけ外にだせるような形が理想。

ラブパイローがどこまで後続を離して逃げるか・・・がひとつのポイントにはなりそう。

勝ち馬のプロファイル

当サイトが想定するオークスの勝ち馬像を箇条書きにまとめると以下のとおり。

  • 多頭数での競馬の経験がある
  • 平均ペース以上でのレースの経験がある
  • 東京コースの経験がある
  • 34秒台前半より早いの末脚は必須
  • ポジション取りは好位から中団まで
  • 直線でスムーズに進路を確保できる

この条件に最も合致するのは、サークルオブライフ。意識的に出していったチューリップ賞を除けば末脚は確実で東京コースでの経験もあり。トップスピードを長く持続できる馬で、2歳時から「距離が伸びた方がよい」とも言われていた馬。桜花賞では前残りの馬場を大外から競馬することになり4着におわったが、東京2400mであればそのような紛れによる敗戦リスクも小さく軸馬としての信頼度はかなり高い。

相手馬候補

サークルオブライフの相手の候補は次の5頭。ただ、かなり混戦模様で道中の流れやちょっとした不利の有無で入れ替わる可能性も高い。

  • ウォーターナビレラ
  • ルージュエヴァイユ
  • プレサージュギフト
  • スターズオンアース
  • ベルクレスタ

ヒモ候補

大混戦の組み合わせなので3連系の馬券を買うときはできるだけ広く受けたい。

  • スタニングローズ
  • ナミュール
  • ピンハイ
  • エリカヴィータ
  • アートハウス